- その文字の姿(材木、太陽、ろうそくの灯など)
- 喜ぶもの(その文字を生かす五行)
- 恐れるもの(その文字を傷めるもの)
- 進むとよい方角(運の向き)
GENTEN SUIMEIDO JOURNAL
十干体象と十二支体象とは?「甲は材木・丙は太陽」を四柱推命の原典の詩で読む
十干体象・十二支体象とは
十干体象と十二支体象とは、四柱推命の原典『淵海子平』巻四にある干支の詩です。十干の10文字と十二支の12文字に一首ずつ、全部で22首あります。
「体象(たいしょう)」とは、そのものの形や姿のことです。甲は切り出された材木、丙は太陽、丁はろうそくの灯のように、一文字ずつの姿を自然物で描いています。詩はどれも七言八句(7文字×8行)です。
現代の四柱推命でおなじみの「丙=太陽」は、後の時代の思いつきではありません。原典の詩に、ちゃんと出てきます。一方で「甲=大木」は、原典の像とは違います。原典の甲は、生きて伸びる木ではなく、切り出されて棟や梁になる材木です。この記事では、その詩の中身を見ていきます。
詩から拾える4つのこと
詩として読むと難しく見えますが、この4つを拾えば中身がつかめます。方角は運が伸びやすい向きのことで、10年ごとの運の見方につながります。
十干そのものの読み方や五行との対応は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
-
-
四柱推命の天干とは?十干(甲・乙・丙…)の読み方と意味をやさしく解説
四柱推命の天干とは 四柱推命の天干(てんかん)とは、命式の上の段に並ぶ4つの文字のことです。文字は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10種類です。この10文字をまとめて十干(じっかん)と呼びます ...
続きを見る

十干体象の詩を読む
まずは十干の詩から、甲の一首を全文で見てみましょう。天干の先頭に立つ文字です。
甲の木は天干の先頭に並ぶ
漢文原文
甲木天干作首排,原無枝葉與根荄;欲存天地千年久,直向沙泥萬丈埋。斷就棟樑金得用,化成灰炭火為災;蠢然塊物無機事,一任春秋自往來。
書き下し文
甲木は天干首に作りて排び、原より枝葉と根荄無し。天地に千年久しく存せんと欲すれば、直ちに沙泥に向かいて万丈に埋もる。断ちて棟梁に就けば金用を得、化して灰炭と成れば火災を為す。蠢然たる塊物に機事無く、一に春秋の自ら往来するに任す。
現代語訳
甲の木は天干の先頭に並ぶ。もとから枝も葉も根も持たない。天地の間に千年も残ろうとするなら、砂や泥の深いところへまっすぐ埋まる。切り出して家の棟や梁にするなら金(刃物)が役に立ち、灰や炭にしてしまえば火は災いとなる。のっそりとした塊のようなもので、細かい駆け引きはない。ただ春秋がおのずと巡るのに任せている。
甲:切り出されて棟や梁になる材木
甲の詩は、甲を枝葉のない一本の大きな材木として描いています。金(刃物)で切り出されれば棟木になり、火にあえば灰や炭になる。喜ぶものと恐れるものが、この2行にそろっています。
現代の四柱推命では甲を「大木」と説明します。けれども原典の甲は、生きて根を張る木ではありません。もとから枝も葉も根も無く、切り出されて家の棟や梁を支える材木として詠まれています。乙の詩が「棟梁はこれ根に連なる木にあらず」と、根を張る乙と見分けるよう述べているのも、この対比です。
最後の「のっそりとした塊で、駆け引きがない」という句も印象的です。褒めているのか、からかっているのか、微妙な言い方です。
参考
甲木参天は、『滴天髄(てきてんずい)』という別の命理書の句です。原典の甲の詩は、上のとおり「天干の先頭に並ぶ」から始まります。出典が別の本だと知っておくと、解説を読み比べるときに混乱しません。
原典推命堂では、甲の姿は原典の詩のとおり「切り出されて棟や梁になる材木」で説明します。タイプ名も「棟梁の人」です。
丙:あかあかと照る一つの太陽
丙の詩は、丙を「あかあかと照る一つの太陽」と呼びます。その光は千里を越え、世界の果てまで届くと歌われます。恐れるのは、木が茂って林になることです。
丁:太陽に会うと光を奪われる灯
丁の詩は、丁を一本のろうそくの灯として描きます。面白いのは、太陽(丙)に会うと光を奪われるという一句です。昼間の灯火が目立たない情景そのものです。
それでも、時を得れば千金の鉄を鋳ることもできると続きます。小さな火でも、季節と条件がそろえば大きな働きをする、という描き方です。
辛:霊に通じる珠玉
辛の詩は、辛を珠玉(宝石)として描き、十干でただ一つ「霊に通じる」と言います。激しい火で鍛える必要はなく、湿った泥に育てられるのを好むと続きます。現代の「辛=宝石」という説明も、この詩とよく重なります。
癸:雨露かと思えば大河にもなる
癸の詩は、十干で唯一、問いかけから始まる一首です。癸の水は雨や露ではないのか、と投げかけます。
そのうえで、亥や子に根が通れば大河になると答えます。小さな水にも大きな水にもなりうるのが、癸の姿です。現代の解説で癸を「雨」とするのは、この詩の前半にあたります。

十二支体象の詩を読む
十二支の詩も、十二支それぞれの姿を描いた12首です。ここでは子の一首を全文で見てみましょう。
月支の子の水は「魁(かしら)」の名を占める
漢文原文
月支子水占魁名,溪澗汪洋不盡清;天道陽回行土旺,人間水暖寄金生。若逢午破應無定,縱遇卯刑還有情;柱內申辰來合局,即成江海發濤聲。
書き下し文
月支の子水は魁の名を占む、渓澗汪洋として尽きず清し。天道は陽回りて土旺を行き、人間は水暖かにして金の生を寄す。若し午の破に逢はば応に定まる無かるべく、縦ひ卯の刑に遇ふとも還た情有り。柱内に申辰来りて局を合すれば、即ち江海と成りて濤声を発す。
現代語訳
月支の子の水は「魁(かしら)」の名を占める。谷川も大水も清らかで尽きることがない。天の道では陽が回り始めて土が旺じ、人の世では水が暖まり金の生を受ける。もし午との破に逢えば定まらず、たとえ卯との刑に遇っても、まだ情がある。柱の中に申と辰が来て三合の局をなせば、大河や海となって波の音を立てる。
子:谷川から大河まで、清く尽きない水
子の月は、冬至を含む真冬の月です。子の詩は、子を水の筆頭に置き、谷川も大水も清らかだと歌います。
申と辰がそろえば、大河や海になって波の音を立てる。仲間の文字と結びつくと、水の勢いが大きくなる姿です。
丑:真冬の土に、陽が戻りはじめる
丑の詩は、氷と霜を恐れる真冬の土から始まります。けれども、じつは陽に転じる時なのだと続きます。寒さの底で、次の季節の暖かさが芽生えているという描き方です。
寅:春に立ち、火を内に宿す木
寅の詩は、春に立つ木の中に、すでに火があると描きます。三つの陽の気が集まる、早春の力強さです。木の季節の入り口で、次の夏の火が準備されているという見立てです。
十二支体象は「月支」の話
詩の書き出しに注目してください。子は「月支の子の水」、午は「午の月」、未は「未の月」と始まります。十二支の詩の多くは、生まれ月の支(月支)として書かれています。
四柱推命で月支が重く見られるのは、生まれた季節を表すからです。原典推命堂では、日支や年支の説明に使うときは五行の性質の部分だけを取ります。季節の強弱に関わる句は、月支の話として扱います。
支の別名に残る、別の占いの名前
十二支の詩では、酉を「従魁」、戌を「河魁」、亥を「登明」と呼んでいます。これらは六壬(りくじん)という別の占術で使われる呼び名です。当時の占いの本が、互いの言葉を借り合っていたことがうかがえます。
地支そのものの意味と季節は、こちらの記事で紹介しています。
-
-
四柱推命の地支とは?十二支の意味と季節の関係、動物との違いをやさしく解説
地支とは 地支(ちし)とは、子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12文字のことです。つまり、おなじみの十二支です。四柱推命では、命式の下の段に並ぶ4文字がこの地支にあたります。 年賀状の「 ...
続きを見る

22文字の体象ひとこと一覧
残りの詩も、ひとことで並べておきます。四柱推命の命式で自分の日干を確かめ、その行を探して、原典がどんな姿を与えているか眺めてみてください。
| 十干 | 五行 | 詩が描く姿 | 喜ぶもの・恐れるもの |
|---|---|---|---|
| 甲 | 木 | 天干の先頭に立つ、枝も根も無い材木 | 金で棟木になり、火で灰になる |
| 乙 | 木 | 根を深く植えた草木 | 日なたを好み、水が多いと浮き流される |
| 丙 | 火 | あかあかと照る太陽 | 木が林になるのを恐れる |
| 丁 | 火 | 一本のろうそくの灯 | 太陽に会うと光を奪われる |
| 戊 | 土 | 城壁や堤防 | 根が重いことを要し、足元が虚ろだと崩れる |
| 己 | 土 | 田畑の土 | 火と土で功が成り、水と金が強いと弱る |
| 庚 | 金 | 頑丈で鈍い、剛い金 | 火に鍛えられて功が成り、水を恐れる |
| 辛 | 金 | 珠玉のような金 | 湿った泥に育てられ、激しい火はいらない |
| 壬 | 水 | 百の川を併せた大水 | 集まりすぎると漂い、火土が重なると涸れる |
| 癸 | 水 | 雨露とも大河ともなる水 | 亥や子に根が通れば大河になる |
| 十二支 | 詩が描く姿 |
|---|---|
| 子 | 谷川から大水まで、清く尽きない水 |
| 丑 | 氷と霜の中で陽に転じる真冬の土 |
| 寅 | 春に立ち、火を内に宿す木 |
| 卯 | 仲春に繁り栄える木 |
| 辰 | 万木の根を育てる、温かい水と泥 |
| 巳 | 初夏に光を増す火 |
| 午 | 真夏の火。その中で一つの陰が生まれる |
| 未 | 火が衰えはじめる晩夏の土 |
| 申 | 剛健な金。火の炉で剣にも鍛えられる |
| 酉 | 白く澄んだ金(別名「従魁」) |
| 戌 | 最も剛い土(別名「河魁」) |
| 亥 | 水源の深い水(別名「登明」) |
十干の詩の多くに、喜ぶものと恐れるものが書かれています。戊を「山」ではなく城壁や堤防として描いているのも、現代の解説と少し違う点です。
表を縦に見ると、同じ五行の陽と陰が描き分けられています。丙は太陽で丁は灯、壬は大水で癸は雨露です。陽の干は大きく外へ、陰の干は小さく細やかにという対比が、詩の上でもはっきりしています。甲と乙だけは大小ではなく、切り出された材木(甲)と、根を張って生きる草木(乙)の対比です。
やってみると早い
自分の日干と月支は、無料で命式を出せるツールですぐに分かります。日干の詩と月支の詩を、2つ並べて読んでみてください。
命式の主人公にあたる日干の調べ方は、こちらの記事で紹介しています。
-
-
四柱推命の日干とは?調べ方と10種類の性格、「あなたは甲の人」の意味
四柱推命の日干とは 日干(にっかん)とは、生まれた日の天干1文字のことです。四柱推命では、この1文字を命式の主人公=あなた自身として扱います。 命式は、生年月日と生まれた時間を年・月・日・時の4本の柱 ...
続きを見る

原典と現代の性格診断、ここが違う
自然物のたとえは原典にある
甲=棟や梁になる材木、丙=太陽のような自然物の姿は、原典の巻四「十干體象」の詩にはっきり書かれています。一方で巻一「論十二支字義」は、十干を草木が育つ段階として説明しています。原典推命堂では、自然物のたとえを入口に使い、字義を根拠として添えます。
「甲の人は頑固」は原典にはない
現代の解説では、大木の姿から「甲の人はまっすぐで頑固」のように性格の型を決めることがあります。けれども、たとえから性格の型を決める読み方は原典にありません。
詩が描いているのは、五行としての性質と、何を喜び何を恐れるかです。原典推命堂では、性格は命式全体の五行の釣り合いから見ます。
「方角」や「厄」は命式全体で見る話
壬の詩には、ある方角へ進むと若いうちに厄がある、という句もあります。これは大運(10年ごとの運)の向きの話です。四柱推命では、命式全体の釣り合いを前提に見ます。
干支1文字だけで運の良し悪しを決める句ではありません。原典推命堂でも、こうした句は命式を読むときの材料の一つとして扱います。
干支の組み合わせ60通りの全体像は、こちらの記事で紹介しています。
-
-
六十干支とは?十干と十二支の60の組み合わせと、四柱推命での使われ方
六十干支とは 六十干支(ろくじっかんし)とは、十干と十二支を順番に一つずつ組み合わせた、60通りの干支です。甲子(きのえね)から始まり、60番目の癸亥(みずのとい)で一巡して、また甲子に戻ります。 十 ...
続きを見る

まとめ
十干体象と十二支体象は、干支22文字に一首ずつ贈られた、原典の自然の詩です。たとえを知ると、四柱推命の命式の8文字が一枚の風景画に見えてきます。
次にすることは一つです。自分の日干の詩を一覧で探し、喜ぶものと恐れるものを確かめてみてください。日干の詩がその人の姿なら、月支の詩はその姿が置かれた季節の景色です。