- 前半:天地の始まりと、干支の起こり・性質
- 中盤:十二運と蔵干の表、柱の起こし方
- 後半:吉凶の星の出し方と、運・節気の計算
- 巻末:日干を主とする考え方と喜忌篇
GENTEN SUIMEIDO JOURNAL
淵海子平の巻一には何がある?目次をたどって四柱推命の道具の作り方を知る
淵海子平の巻一とは
『淵海子平』巻一は、四柱推命で使う道具の「作り方」をまとめた巻です。『淵海子平』は宋の徐升の編と伝えられる全五巻の原典で、その最初の一冊にあたります。
この巻には77の篇が並んでいます。篇とは、一つの話題をまとめた章のことです。
十二運の表、蔵干の歌、星の出し方、運の区切り方。現代の四柱推命で命式に出てくる項目の多くが、この巻に作り方ごと載っています。
面白いのは、その並び順です。目次の最初は天地開闢、つまり天と地が分かれる話です。そして最後は、「日干が自分」と説く総論で締めくくられます。
巻一の目次は4つのまとまり
前半は「表と起例」、巻末は「考え方」。起例とは、星や柱を出すための決まりを歌や表にしたものです。『淵海子平』全体の成り立ちや、全五巻の構成は、こちらの記事で紹介しています。
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巻一の前半:天地開闢と干支の起こり
最初の「論五行所生之始」は、四柱推命の教科書なのに天地創造から始まります。五行がどこから来たのかを語ってから、干支の話に入る構成です。
混沌の中に一つの気が結び、五行が生まれる
漢文原文
蓋聞天地未判,其名混沌;乾坤未分,是名胚腪;日月星辰未生,陰陽寒暑未分也。在上則無雨露,無風雲,無霜雪,無雷霆,不過杳合而冥冥;在下則無草木,無山川,無禽獸,無人民,不過昧昧而昏作。是時一氣盤中結,於是太易生水,太初生火,太始生木,太素生金,太極生土。
書き下し文
蓋し聞く、天地未だ判れざる、其の名は混沌。乾坤未だ分かれざる、是れ胚腪と名づく。日月星辰未だ生ぜず、陰陽寒暑未だ分かれざるなり。上に在りては則ち雨露無く、風雲無く、霜雪無く、雷霆無く、杳合して冥冥たるに過ぎず。下に在りては則ち草木無く、山川無く、禽獣無く、人民無く、昧昧として昏作するに過ぎず。是の時、一気盤中に結び、是に於て太易水を生じ、太初火を生じ、太始木を生じ、太素金を生じ、太極土を生ず。
現代語訳
聞くところによれば、天地がまだ分かれていないときを混沌といい、乾坤がまだ分かれていないときを胚腪(はいたい、胎のはじまり)という。日月星辰はまだ生まれず、陰陽も寒暑も分かれていない。上には雨露も風雲も霜雪も雷もなく、ただかすかに合わさって暗いだけ。下には草木も山川も鳥獣も人もなく、ただ暗くうごめくだけ。そのとき一つの気が中で結び、太易が水を、太初が火を、太始が木を、太素が金を、太極が土を生んだ。
雨も風も草木もない暗闇に、一つの気が結んで五行が生まれる。占いの本とは思えない、壮大な書き出しです。
続く「論天干地支所出」では、黄帝が蚩尤と戦い、天から十干十二支を授かったという神話が語られます。その十干と十二支を組み合わせて60の干支にしたのは、大撓氏という人物だと伝えています。
干支どうしの関係と字の意味
神話のあとは、干支どうしの関係を一つずつ論じる話が続きます。
- 天干どうしが結びつく干合
- 十二支の六合・三合
- ぶつかり合う沖と、六害(巻一では「相穿」と呼ぶ)・刑
- 干支22字の字の意味と、十二支の動物の由来
字の意味を説く「論干支字義」は、十干と十二支を草木が育つ段階で説明しています。「論十二支生肖」は、爪の数の陰陽からその動物が選ばれたという説を、別の書物から引いています。
干支の字の意味と、十干を自然物にたとえる詩は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
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巻一の中盤:十二運と蔵干の表、柱の起こし方
中盤は、命式を組み立てるための表が並ぶ部分です。現代の四柱推命のアプリが画面に出す項目の多くは、ここに原型があります。
十二運の表
「論天干生旺死絕」は、十干ごとに長生から養までの12段階を割り振った表です。これが十二運の出どころです。
十二支を四角に並べた図もあり、沐浴の位置には「敗」の字が置かれています。12段階それぞれの意味と調べ方は、こちらの記事で紹介しています。
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蔵干の図と歌
「月律分野之圖」は、月ごとに地支の中に隠れた天干と、それが働く日数を示した図です。各月には太簇・夾鐘といった音階の名前が添えられています。音の名前で月を呼ぶ、昔の習慣の名残です。
じつはこの巻には、地支に隠れた天干を説く図や歌が3か所に出てきます。原典推命堂は、そのうち「又地支藏遁歌」を蔵干表の典拠にしています。
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月柱と時柱の起こし方
「論年上起月例」は、年の天干から月の天干を出す歌です。「論日上起時例」は、日の天干から時刻の天干を出す歌です。どちらも暗記用の短い歌で、当時の術者はこれを覚えて命式を組みました。
同じ並びに、受胎の月を出す胎元や、息・変・通という補助の柱の起こし方も載っています。息・変・通は現代ではほとんど使われない道具です。原典には、使われなくなった道具もそのまま残っています。
いまは手で数えなくていい
昔の術者は、歌を覚えて一柱ずつ手で出していました。 いまは無料で命式を出せるツールで、8文字から蔵干まで一度に表示できます。自分の命式で確かめたい方は、無料鑑定で出してみてください。

巻一の後半:神殺の起例と大運の起こし方
後半の大部分を占めるのが、神殺の出し方です。神殺とは、貴人・駅馬・羊刃のように、干支の組み合わせで出す吉凶の星のことです。この星の話だけで31の篇が続きます。
星の並び
並びは、貴人の星 → 禄 → 駅馬・華蓋 → 空亡 → 凶日 → 羊刃の順です。天乙貴人の出し方は、覚えやすいように動物の名を並べた歌で書かれています。
「論十干祿」では、禄や駅馬、貴人の星だけを頼りにするなという古書の言葉も引かれています。星を並べながら、星に頼りすぎるなと釘を刺しているのです。
凶日や凶殺を扱うところには、物騒な言葉の歌もあります。日取りを選ぶ発想が、命式の中に持ち込まれた名残です。
原典ではこう扱う
現代の四柱推命の本には、たくさんの星が載っています。ですが原典に出し方が書かれているのは、その一部だけです。 原典推命堂は、原典に起例がある星だけを採用しています。文昌貴人のように出し方が載っていない星は、「原典にない星」と明示しています。
どの星が原典にあり、どう出すのかは、こちらの記事で一覧にしています。
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大運と節気の計算
星の篇のあとは、大運の起こし方です。大運とは、10年ごとに巡る運の区切りのことです。
「論起大運法」は、陽の年の男性と陰の年の女性は順に、その逆は逆に進めると書きます。生まれた日から節気までの日数を数えて、運の始まる年齢を出します。
続いて、1年ごとの小運や、24節気の歌、節入りの時刻を推し量る歌が並びます。運の区切りは節気に沿って動くので、節気の計算がすぐ後ろに置かれているのです。

巻一の総論:「日干が自分」と「生旺に泥むな」
巻一の最後の11篇は、表ではなく考え方を語る総論です。四柱推命の芯が、ここで初めて言葉として語られます。
その最初の「論日為主」は、唐の李虚中から宋の子平へという流れを語ります。そのうえで、日干を主人公に置くと宣言します。続く「論月令」は、月柱を命式の要(提綱)と位置づけています。
その要点を短い歌にまとめたのが「子平舉要歌」です。
命を見るには、まず日主を詳らかにせよ
漢文原文
造化先須詳日主,坐官坐印衰旺取;天時月令號提綱,元有元無旺重舉。
書き下し文
造化は先づ須らく日主を詳らかにすべし、官に坐し印に坐する、衰旺もて取る。天時の月令は提綱と号し、元有り元無き、旺重もて挙ぐ。
現代語訳
命を見るにはまず日干をよく調べよ。官に坐すか印に坐すか、その衰旺で取る。天の時である月令は提綱と呼び、そこに元(用神)があるかないか、その旺じる重さで取り上げる。
まず日干、次に月令。現代の四柱推命の入門書と同じ順番が、この歌の中にもう書かれています。
自分の表を疑う総論
同じ並びで目を引くのが「又論五行生旺衰絕吉凶」です。生旺の考え方を紹介したうえで、その法で命を推すと十のうち九は外れるとまで書いています。
中盤で表をきちんと載せておきながら、巻末で表を機械的に当てはめるなと戒めているのです。これは「四柱推命は当たらない」という意味ではありません。一つの表だけで命を決めるなという戒めです。
原典推命堂も、十二運は日干の勢いを見る手がかりの一つとして使い、それだけで吉凶を決めません。原典の戒めを、そのまま鑑定の規則にしています。
目次の最後を飾る喜忌篇
目次の最後は喜忌篇です。格局(命式の型)ごとに、何を喜び何を嫌うかを並べた総まとめです。
この喜忌篇は、巻二の冒頭の「繼善篇」と対になる名文です。巻二からは、ここで作った道具の使い方が始まります。
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まとめ
『淵海子平』巻一は、天地開闢から始まり、表と起例を積み上げて「日干が自分」と言い切る巻です。目次をたどるだけで、四柱推命の道具がどこで作られたかが見えてきます。
次にすることは、自分の命式の中にこの巻の道具を探してみることです。命式の一つひとつの項目が、どの篇から来たのかを思い浮かべると、見え方が変わってきます。